遺言能力とは、遺言書を作成することができる能力のことをいい、遺言の内容を理解し、遺言の結果を認識できる能力です。
司法書士法人entrustでは、日々、遺言作成に関するご相談をいただいておりますが、依頼者からこのように聞かれることがあります。
「親が認知症だけど、遺言書つくれますか?」
と。これはとてもセンシティブな内容です。
ただ、はっきり申し上げられるのは、
「認知症だからといって、それだけで遺言書が作れないわけではない」
ということです。
つまり、[認知症=遺言能力なし]とはならない、ということです。
認知症であっても、遺言書の内容をきちんと理解し、遺言を作成することでもたらされる結果を認識することができているのであれば、有効な遺言を作成することが可能です。
では、民法では、この遺言能力についてどのように定められているか、見てみましょう。
【民法一部抜粋】
(遺言能力)
第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。
第962条 第5条、第9条、第13条及び第17条の規定は、遺言については、適用しない。
第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
(被後見人の遺言の制限)
第966条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
第2項 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。
(成年被後見人の遺言)
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
第2項 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
このように、民法は「成年被後見人の遺言」規定まで定めていることからも、[遺言者の最終の意思の尊重すべき]といえます。
また、認知症とひと言でいっても、認知症には程度や段階があるので、一括りにすることはできません。
認知症の進行は、前兆・初期・中期・末期の段階に分かれており、それぞれの進行度合いによって、程度は大きく異なるのです。
ただし、遺言者が認知症になっている場合、後に、遺言書の有効性が争われる恐れがあるのも事実です。
そのため、遺言書作成のお手伝いをさせていただく専門家として、「遺言無効」と判断されないように、遺言能力の有無をあらゆる角度から確認しておくことが大切です。
具体的な対策の一例は以下のとおりです。
①公正証書遺言で作成
⇒「公正証書遺言は無効にならない」というわけではないですが、自筆証書遺言と比べると、公正証書遺言は、公証人や証人2名の立会いのもと作成することになるので、無効になりくにいです。
②遺言者の判断能力の確認
⇒俗にいう「長谷川式スケール」で確認したり、医師の診断書を取得しておくことも有効です。
③複雑すぎる遺言内容は避ける
⇒遺言書は、あくまでも遺言者の最終意思を反映させるものであり、遺言内容が複雑すぎると、「こんな難しい遺言が書けるわけない」と言われかねないためです。
④遺言作成時や打合せ時の状況を記録したり、録画しておく
⇒遺言者の真意で遺言書が作成されたということを、後日確認できるように記録・録画しておくことが大切です。
以上です。
認知症と診断されたから、遺言書の作成を諦めるのではなく、
[遺言能力があるか]
[遺言者の意思を最大限尊重できるか]
ということが大切です。
「遺言書を作らなかった後悔」は絶対にして欲しくない。
「遺言書があって本当によかったね!」と、一人でも多くの方に思っていただきたい。
司法書士法人entrustでは、[一人一遺言]を推奨しております。
「遺言能力はまだあるのかな?」
「自分には遺言書が必要なのだろうか?」
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